小説 (story)
11660 あの農場にとまって、地下室を借りてたんで、夜は自由に出入りできたし、誰一人気づかなかった。
11661 俺はあれこれエルシィをそそのかしてみました。
11662 確かに伝言は読んでるらしく、一度は返事をくれましたからね。
11663 そこで俺は調子に乗って、あいつを脅し始めたんです。
11664 するとあいつは一通の手紙をよこして、俺に立ち去るよう頼み込んできました。
11665 夫の身辺で不名誉なことが起きるかと思うと、気が気でないってね。
11666 あいつは夫の寝静まった午前三時に抜け出して、突き当たりの窓まで出て話すっから、それきり立ち去って、静かに暮らさせてくれ、って言ってきました。
11667 実際あいつが来たとき、あいつは金を持ってきて、その金で俺をどこかへやっちまおうとしたんです。
11668 そんで、俺はかっとなって、あいつの腕を取って、窓から引きずりおろそうとしました。
11669 と、その瞬間、あいつの旦那がリヴォルヴァを持って飛び出してきました。
11670 エルシィは床の上にくずおれていたんで、俺たちは顔と顔を向き合わせた格好だったんです。
11671 俺も武器を持ってたんで、拳銃を取り出して、旦那を脅かして逃げようとしました。
11672 けど向こうが撃ちやがって、外れて、俺も同時にぶっ放して、向こうが倒れちまいました。
11673 俺は庭を踏み越えていったんですが、走りながら、後ろの方で窓を閉める音が聞こえました。
11674 神に誓って、みなさん、偽りはひとつもねえ。
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