小説 (story)
11655 要は、裏の仕事にどうしてもかかわりたくなかったってことですよ。
11656 俺があいつの居場所をつきとめたときには、もうこのイギリス人と結婚したあと。
11657 手紙を出したんですが、返事はなし。
11658 そんで俺はわざわざやってきて、手紙も無駄でしたから、あの伝言を目のとまるところに置いたんです。
11659 とにかく、俺がここに来てもう一ヶ月です。
11660 あの農場にとまって、地下室を借りてたんで、夜は自由に出入りできたし、誰一人気づかなかった。
11661 俺はあれこれエルシィをそそのかしてみました。
11662 確かに伝言は読んでるらしく、一度は返事をくれましたからね。
11663 そこで俺は調子に乗って、あいつを脅し始めたんです。
11664 するとあいつは一通の手紙をよこして、俺に立ち去るよう頼み込んできました。
11665 夫の身辺で不名誉なことが起きるかと思うと、気が気でないってね。
11666 あいつは夫の寝静まった午前三時に抜け出して、突き当たりの窓まで出て話すっから、それきり立ち去って、静かに暮らさせてくれ、って言ってきました。
11667 実際あいつが来たとき、あいつは金を持ってきて、その金で俺をどこかへやっちまおうとしたんです。
11668 そんで、俺はかっとなって、あいつの腕を取って、窓から引きずりおろそうとしました。
11669 と、その瞬間、あいつの旦那がリヴォルヴァを持って飛び出してきました。
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