小説 (story)
11643 「俺も、自分にできる最善は、ありのままのことをしゃべっちまうことだと思います。」
11644 「職務上忠告しておくが、自分に不利な証拠として扱われることもあるぞ。」
11645 警部は、大英帝国刑法の崇高なる公正のため、口を挟んだ。
11646 スレイニは肩をすくめて、
11647 「運に任せるさ。」と言ってから、語り始めた。
11648 「まずあんた方にご理解いただきたいのは、俺とあいつは幼なじみってことです。
11649 俺たち七人はシカゴで徒党を組んでて、エルシィの父親は一味のボスでした。
11650 頭の切れる男で、パトリックのおやじと呼んだもんです。
11651 その暗号を考え出したのもおやじで、普通はガキのいたずらにしか見えません。
11652 たまたま鍵を持っちまったあんたは例外さ。
11653 そんで、エルシィは俺らの稼業にちょっと気づいちまって、こんな仕事にはたえきれねえって、ちっとばかり自分で作ったまともな金を持って、俺たちをまいてロンドンへ逃げちまったんです。
11654 あいつと俺はそんとき婚約済みで、俺は思うんですが、俺だって別の商売をやってりゃあ、結婚してくれたはずです。
11655 要は、裏の仕事にどうしてもかかわりたくなかったってことですよ。
11656 俺があいつの居場所をつきとめたときには、もうこのイギリス人と結婚したあと。
11657 手紙を出したんですが、返事はなし。
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