小説 (story)
11601 男は深いうめき声を上げながら、長椅子にへたり込み、手錠のかかった両手で顔を覆った。
11602 五分ほど黙り込んでいたが、また顔を起こして、今度は観念して静かに語り出した。
11603 「隠すことなんか、何ひとつないんだ。」
11604 男は言葉を続ける。
11605 「俺が男を撃ったのなら、あの男も俺に撃ったんだ。
11606 殺しの罪じゃあない。
11607 あんた方が、俺があいつを傷つけたっていうんなら、俺とあいつのことをよく知らねえってことだ。
11608 いいか、この世でどんな男がどんな女を愛するよりも、俺はあいつを愛していたんだ。
11609 俺にはあいつをもらう権利がある。
11610 何年か前、あいつは俺に誓ったんだ。
11611 横入りしやがったこのイギリス人こそ何様のつもりだ!
11612 いいか、俺にはあいつへの優先権がある、おれはそれを主張しただけだ。」
11613 「ご婦人が君の手から逃げ出したのは、その君の本性に気づいたからだ。」とホームズの厳しい声。
11614 「ご婦人は君を避けるためアメリカを飛び出し、立派な英国紳士と結婚した。
11615 君はご婦人につきまとい追いかけ、彼女の人生を苦しみに変えた。
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