小説 (story)
11575 あのような男が相手では、用心に越したことはない。
11576 手錠も必要です、警部。
11577 話すのは、僕にお任せ願いましょう。」
11578 一分のあいだ、我々は息を殺して待った。
11579 これもまた、忘れることの出来ないひとときだ。
11580 やがて扉が開き、その男が中に入る。
11581 と思ううちに、ホームズが拳銃を男の頭に狙いつけ、マーティンが素早く手錠をはめた。
11582 あっという間の出来事だったので、男も手も足も出せず、しばらくしてようやく捕まったことに気づく有様だった。
11583 その男は我々を、次から次と、その黒く鋭い目でにらみつけた。
11584 そして、苦々しく笑い声を上げる。
11585 「なるほど、あんた方にしてやられたわ。
11586 厄介なことにでくわしちまったらしい。
11587 だが俺はヒルトン・キュービット夫人の手紙に応じてここへ来たんだぜ。
11588 まさか、あいつも一枚噛んでるってことはないよな?
11589 この罠を仕掛けるのに協力なんてしてないよな?」
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