小説 (story)
11455 ホームズはほんのしばらく考えをめぐらせると、ふしぎな笑みを浮かべるのであった。
11456 「では君、馬の用意をして、ひとつ書き付けをそのエルリッジ農場へ持って行ってくれないか。」
11457 ホームズは懐から、踊る人形の紙切れをすべて取り出し、前に並べてしばらく書斎の机に向かった。
11458 やがて一枚の書き付けをその少年に渡し、これをこの宛名の人に手渡し、またどんな質問をされても決して答えないよう、くれぐれも言い含めた。
11459 書き付けの表面を見ると、宛名が、いつものホームズの綺麗な筆跡とは似つかない、めちゃくちゃな字で書き殴ってあった。
11460 ノーフォーク州、東ラストン、エルリッジ農場、エイブ・スレイニ宛とされていた。
11461 「ひとつ警部、」とホームズは声を張る。
11462 「電報で護送隊を要請した方がよいかと存じます。
11463 僕の計算が確かなら、警部はこれから極悪犯を州刑務所へ送らねばなりません。
11464 書き付けを持って行くこの少年に、その電報を届けさせましょう。
11465 午後にロンドン行きの汽車があれば、ワトソン、うまく乗れそうだ。
11466 愉快な化学分析を終わらせてしまいたいし、この捜査もまもなく幕切れとなる。」
11467 その少年が出発すると、次にシャーロック・ホームズは召使いたちに指示を与えた。
11468 もしヒルトン・キュービット夫人を訪ねて来る者があっても、決してその容態を知らせてはならないこと、そしてその者を早速応接間へ通すこと—こういったことを熱心に言い含めた。
11469 それが終わると、もう仕事も手を離れたから、いずれまた何かが出てくるまで安楽に過ごそう、と言いながら、我々を応接間の方へ導いた。
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