小説 (story)
11371 硝煙は化粧着にも手にも残っていなかった。
11372 老医師の話では、妻も顔にはそのあとがあるものの、手にはなかったとのことだ。
11373 「手にないだけでは何もわからない。
11374 —もっともあれば、一目瞭然だが。」とホームズは言った。
11375 「弾の込め方がまずくて火薬が後ろへ吹っ飛ばない限り、何発でも跡を残さず撃つことができる。
11376 キュービット氏の遺体はもう動かしてもよろしいでしょう。
11377 それから先生、夫人を撃った弾は、まだ摘出してませんね?」
11378 「そのためには大手術が要りますからな。
11379 しかしリヴォルヴァには四発残っておって、二発で二人負傷、勘定はぴったりですな。」
11380 「一見は。」というホームズの声。
11381 「しかし、あの窓の縁を貫いている弾も、しっかり勘定に入れねば。」
11382 さっと振り返り、ホームズはやせた長い指で一点を指さした。
11383 下側の窓枠、床から一インチのところに、何かに貫かれた穴があった。
11384 「本当だ!」
11385 警部が声を張り上げた。
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