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小説 (story)

踊る人形の冒険 (danc)

11348    息はなかった。
11349    窓のそばにその妻がうずくまっており、壁に頭をもたせかけていた。
11350    重傷で顔じゅう血で真っ赤だった。
11351    ぜいぜい息をするだけで、何も言えない状態だった。
11352    室内はもちろん、廊下にも煙が充満し、火薬の臭いがした。
11353    部屋の窓は確かに閉められて、内側から鍵もかかっていた。
11354    ふたりの女は、この点に関して自信をもって保証した。
11355    ふたりはすぐに医者と駐在所に人をやって、それから馬番と手伝いの少年の手を借りて、負傷した女主人を自室へ移した。
11356    彼女とその夫は、いったんは床についている。
11357    女の方は普段着だが—男の方は寝間着の上に、化粧着を重ねていた。
11358    書斎の中は一切動かされた形跡がなかった。
11359    ふたりの知る限り、夫婦のあいだに諍いのあったためしはなく、ふたりは仲むつまじいとしか思えなかった。
11360    以上のことは女中たちの証言の大要であるが、マーティン警部に答えた言葉では、扉という扉はすべて内側からしっかりと鍵がかけられてあって、誰かが家の中から逃げ出したはずはない、とのことであった。
11361    それからホームズの問いに対しては、火薬の臭いがしたのは、一番上の自分たちの部屋を飛び出したときであった、と答えた。
11362    「この事実を、よく覚えておいてください。」と、ホームズは捜査仲間に言った。

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