小説 (story)
11311 「ぐずぐずせず、早速聞き取りと邸内の捜査を始めましょう。」
11312 マーティン警部は物わかりもよく、我が友人を自由にやらせてくれ、ただその結果を見守るだけで満足のようだった。
11313 地元の医者である白髪の老人が、ちょうどヒルトン・キュービット夫人の部屋から降りてきた。
11314 その話によれば、傷は深いが命に別状はないとのこと。
11315 弾が額を割っており、意識を取り戻すにはしばらく時間がかかるそうだ。
11316 誰かに撃たれたのか、彼女が自分で撃ったのか、医者ははっきりとした所見を述べなかった。
11317 しかし至近距離から発砲されたことは確かだった。
11318 室内には拳銃が一丁だけあり、弾倉がふたつ空になっていた。
11319 ヒルトン・キュービット氏は心臓を打ち抜かれていた。
11320 判断しがたいのは、旦那が妻を撃ってから自殺したのか、それとも妻が犯人なのか、ということだ。
11321 なぜなら、リヴォルヴァはふたりのあいだの床に落ちていたからである。
11322 「遺体はそのまま?」とホームズは医者に訊ねた。
11323 「はい、奥さんのほかは何も。
11324 けが人を床の上に放ってはおけませんからの。」
11325 「先生はいつ頃おいでです?」
Go to Dashboard (guest)