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小説 (story)

踊る人形の冒険 (danc)

11286    ホームズは一語も発せず馬車へ駆け込み、それから七マイル以上の道中、決して口を開かなかった。
11287    私は、ホームズがこれほど落胆しているのを、そう見たことがない。
11288    町から車に揺られているあいだずっと落ち着かない様子で、朝刊にただじっと不安な視線を落とすホームズを、私は横からながめていた。
11289    そして予想した中でも最悪の結果に至っていることがわかった瞬間には、茫然自失のていであった。
11290    座席にもたれかかり、ホームズは先の見えない物思いに沈む。
11291    もちろん馬車の両側には、興味深い眺望が広がってはいる。
11292    つまり、我々が今走っているのは、イングランドでも有数の田園地帯である。
11293    まばらな人家がその現在の人口を思わせ、一方で、どちらを向いても、尖塔を持つ教会が、緑広がる風景のなかにいくつもそびえ立っている。
11294    旧東アングリア王国の栄枯盛衰を物語るながめだ。
11295    やがて北海の紫がかった水面が、ノーフォークの緑の海岸線の向こうに見えてくる。
11296    すると御者は、むちで樹木から突き出ている煉瓦と木でできた二つの破風をさして、「あれがリドリング・ソープ荘園です」と言った。
11297    ポルチコ型の玄関先へ乗り付けると、私はその屋敷を正面から見やった。
11298    わきにはテニスのできる芝地と黒い物置小屋、台座付きの日時計があり、今回の不思議な事件を思い起こさせた。
11299    隣では、口ひげをととのえた、身のこなしの軽いひとりの小柄な男が、ちょうど二輪馬車を降りたところであった。
11300    その男は、ノーフォーク警察のマーティン警部であると自己紹介したが、我が友の名を聞いたときはかなり驚いた様子だった。

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