小説 (story)
11266 ヒルトン・キュービットに事の次第を知らせねば。
11267 これこそ、あのノーフォークの地主にからみついている、怪しく危険な蜘蛛の糸なのだ。」
11268 まさにその言葉の通りだった。
11269 単なる子どもだましに思えたお話の、あの暗澹たる結末に筆が及んだら、私はあのとき感じた戦慄をもう一度味わうことになろう。
11270 読者諸君にはどうにかしていい話を聞かせたいと思うのだが、以下が事実の記録であり、このリドリング・ソープ荘園という名が、たった数日でイングランドのありとあらゆる家庭で口の端にのぼることになった物語を、私は続けねばならない。
11271 我々が北ウォールシャムで下車し、行き先を言うやいなや、駅長が我々の前に走ってきた。
11272 「ロンドンからおいでの警察の方々ですね?」
11273 ホームズの顔に、当惑の色がさす。
11274 「いったいなにゆえそうお思いに?」
11275 「実はさきほど、マーティン警部がノリッジからお越しになったものですから。
11276 ですがお医者さまでいらっしゃるかもしれませんね。
11277 奥さんはまだ生きてます—さっきうかがったところでは。
11278 まだ間に合います—まあ、いずれ首を括られるでしょうが……」
11279 ホームズの顔が不安にかげる。
11280 「実はリドリング・ソープ荘園に向かう途中で、何が起こったのかまだ知らないのです。」
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