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小説 (story)

踊る人形の冒険 (danc)

11226    しかし、妻の声の調子なんですよ、ホームズさん、目の色も、どうも嘘をついているとは思えないんです。
11227    それで私は、やはり本当に妻が心配したのは、私の身であったのだと考えます。
11228    これでもう話は終わりましたが、さてどうすればいいのか、ご助言いただきたいです—私の考えとしては、小姓どもを五、六人茂みに潜ませて、出てきた曲者をしたたか打ちのめせば、以後私どもに近寄ることもないかと存じますが。」
11229    「そんな単純な手で収まりはつきますまい。」とホームズは言う。
11230    「ロンドンにはどの程度ご滞在で?」
11231    「今日中には帰宅を。
11232    妻を一晩中ひとりにしておくなんて、とんでもない。
11233    おびえきって、必ず帰ってきてくれと申すのです。」
11234    「それが正しいかと。
11235    ご逗留なら、一両日中にはご同行しようかと思いましたが—では、この紙はあずからせてください。
11236    近いうちにお訪ねして、この事件に多少の光明を投げかけることができるかと思います。」
11237    シャーロック・ホームズは、この依頼人が立ち去るまでその職業的な冷静を保っていたが、ホームズを熟知する私には、ホームズの内なる興奮が見て取るようにわかる。
11238    ヒルトン・キュービットの広い背中が扉の向こうに消えると、すぐさまホームズは机に走り寄り、例の踊る人形の紙を自分の前に並べて、込み入った計算にじっと取り組むのであった。
11239    二時間ばかり、何枚も数字と文字を書くホームズの姿を、私はながめていた。
11240    その仕事に没頭するあまり、私の存在などどこへやらという風であった。

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