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小説 (story)

踊る人形の冒険 (danc)

11189    午前二時頃、私は窓際に腰掛けていて、外は月明かり以外まったく光がありません。
11190    そのとき、ふと背後に人の気配を感じました。
11191    化粧着を着た妻がおりまして、私に寝室に帰るよう言うのですが、私は素直に、このふざけたいたずらの張本人を突き止めるつもりだと告げました。
11192    そうすると妻は、きっとつまらないいたずらなのだから、深く気にとめないでと言うのです。
11193    『どうしてもお気になさるのでしたら、ヒルトン、いっそ旅に出ましょう—ふたりで。
11194    そうすれば、わずらわしいことからも逃れられますから。』
11195    私は言いました。
11196    『なに、ほんのいたずらのために自分の家から逃げたとあっては、まったく世間の笑いものではないか。』
11197    『とにかく寝室に戻りましょう。』
11198    と妻が言います。
11199    『色々考えるのは、朝でもよろしいでしょう?』
11200    そのとき、妻の顔にさっと月の光が差して、いっそう青白く見えました。
11201    妻の手が私の肩をぐっとつかんだとき、物置小屋の陰で、何か動いているのに目がとまりました。
11202    何かさっと動く黒い影が、角のあたりをはい回って、戸口の前にうずくまったのです。
11203    私はやにわに拳銃を持って飛び出そうとすると、妻は両腕でしっかりと私を抱きとめて、ふるえるような力で押さえるのです。

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