小説 (story)
11154 「落ち着きません。
11155 得体の知れない人物がどこか近くに潜んでいて、何かをたくらみ、さらに妻がじわじわと殺されていくと考えるだけで、もう、身体がもちません。
11156 そんな状況下で、妻は弱りつつあるのです。
11157 まさに私の目の前で。」
11158 「奥さまはまだ何も?」
11159 「ええ、ホームズさん、言いません。
11160 何か言いたげにはするんですが、やはり決心がつかないのか。
11161 助けようともしたんです。
11162 でも私が不器用なもんですから、余計こわがらせるだけで。
11163 妻が、私の家系のこと、地域における名声、また汚れなき名誉などに言い及ぶこともあって、いよいよ本題に入るのだと思ううちに、話がよそに逸れてしまって。」
11164 「何かご自身でお気づきになったことは?」
11165 「たくさんあります、ホームズさん。
11166 何枚か新しい踊る人形を、ぜひご覧ください。
11167 それに、人影を見たんです。」
11168 「それは、この記号を描いた張本人ですか?」
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