小説 (story)
11145 「どうしてかね?」
11146 「今朝、ヒルトン・キュービットから電報が来た。
11147 ほら、あのキュービットだ、踊る人形の。
11148 彼は一時二十分にリバプール街に着くはずで、まもなくここに来る。
11149 電報から察するに、何か大事が起きたらしい。」
11150 やがて二輪馬車が全速力で、駅から依頼人のノーフォークの紳士を乗せてやってきた。
11151 憔悴した様子で、目は疲れ、額には皺を寄せている。
11152 「息が詰まりそうな事態で、ホームズさん。」
11153 依頼人は半病人よろしく、肘掛椅子にもたれかかった。
11154 「落ち着きません。
11155 得体の知れない人物がどこか近くに潜んでいて、何かをたくらみ、さらに妻がじわじわと殺されていくと考えるだけで、もう、身体がもちません。
11156 そんな状況下で、妻は弱りつつあるのです。
11157 まさに私の目の前で。」
11158 「奥さまはまだ何も?」
11159 「ええ、ホームズさん、言いません。
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