小説 (story)
11113 それから私はホームズさんに手紙を書いて、この紙切れをお送りした次第です。
11114 こんなもの、まさか警察に訴えても笑いものにされて取り合ってくれないでしょうし、あなたでしたらどうすべきか教えてくださると思ったのです。
11115 私は決して裕福ではありませんが、何かが妻をおびえさせているのだとしたら、全財産をかけても妻も守ってやりたいと思うのです。」
11116 善良な男だ—古き良きイギリス人—素朴で実直、そして温和、目は大きく熱意のこもった青色、顔は大きく端正。
11117 ホームズは集中してこの話を聞いていたが、そのあと、しばし黙って思案に沈んでいた。
11118 「ですが、キュービットさん。」
11119 ようやく口を開く。
11120 「最善の策は、直接奥さまにお訊ねになり、秘密を打ち明けてもらうことではないでしょうか。」
11121 ヒルトン・キュービットはその大きな頭を振った。
11122 「約束は約束です、ホームズさん。
11123 もしエルシィが話していいと思うくらいなら、向こうから話してくれます。
11124 また話したくないことなら、強要したくありません。
11125 それでも、私には私でできることがあるはず—なのです。」
11126 「ならば全力でご相談にあずかります。
11127 ではまず、近所に不審な人物を見たという話は?」
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