小説 (story)
11041 「ほう、そう考えるかね。」
11042 「では何だと言うんだ?」
11043 「まさにそれを、ノーフォーク州リドリング・ソープ荘園のヒルトン・キュービット氏が、しきりに知りたがっている。
11044 この謎かけが今朝の第一便で来て、本人はその次の列車で来ることになっている。
11045 ベルの音だ、ワトソン。
11046 その人だとしても、僕は驚かぬよ。」
11047 重々しい足取りが階段に聞こえたかと思ううちに、一人の紳士が入ってきた。
11048 背が高く、血色も良い、ひげも綺麗に剃った紳士で、その澄んだ目、健康なほおは、ベイカー街の霧の中からはるか離れたところで暮らす人を思わせた。
11049 その紳士が部屋の中に入ってきたとき、どこか、きつくさわやかですがしがしい、東海岸独特の香りが漂ってくるようだった。
11050 紳士が我々ふたりと握手を交わし、さて腰掛けようとしたとき、不思議な記号の書かれた紙に目をとめた。
11051 私が見たあと、机の上に置きっぱなしにしてあったのだ。
11052 「ああホームズさん、これをどうお考えですか?」と紳士は声を振り絞る。
11053 「あなたは奇妙奇天烈なことがたいへんお好きだそうですが、きっとこれより奇妙なものはご覧になったことがないでしょう。
11054 前もってお送りすれば、あらかじめお考えになられるだろうと思ったのです。」
11055 「確かに、いくぶん妙ではあります。」とホームズが言う。
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