小説 (story)
11022 「どういう脈略かね。」
11023 「そう思って当然。
11024 だが、僕にはその深い脈略を手短に説明できる。
11025 そこには、ごく単純な連鎖のあいだの、失われた輪がある。
11026 一、君は左の人差し指と親指の間にチョークをつけて、昨晩クラブから帰ってきた。
11027 二、君はビリヤードの際、キューがすべらないよう、いつもその部分にチョークをつける。
11028 三、君のビリヤードの相手は、サーストンだけ。
11029 四、君は四週間前、サーストンから、ある南アフリカの株式について一ヶ月期限のオプションを持っているが、できれば君と共同購入したいと持ちかけられた、と言った。
11030 五、君の小切手帳は、僕の錠の下りた引き出しの中だが、君はその鍵を欲しいと言っていない。
11031 六、かくして君は、投資を思いとどまった。」
11032 「まったく、ひどく簡単な話じゃないか!」と私は叫んだ。
11033 「無論ね!」と、ホームズが少し機嫌を悪くする。
11034 「どんな問題も、いったん君に解き明かせば、みな子どもだましという。
11035 だが、ここにいまだ解かれぬものがある。
11036 これをどう思うね、ワトソンくん?」
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