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小説 (story)

まだらの紐をめぐる冒険 (spec)

10674    「ねえ、ワトソン、私はまったく誤った結論に達していたのだ。
10675    不十分な資料から推論するのがいかに危険かということだ。
10676    不幸なジュリア・ストーナー嬢が、マッチの火でわずかに見えたものを言い表すのに使った『バンド』という言葉と、ジプシーの存在が、私をまったく誤った方向に向かわせたのだ。
10677    部屋の住人を脅かした者は、窓からも扉からも入ってこられなかったということが、明らかになった時点で、立場を考えなおしたことだけは、自分でも良かったと思っている。
10678    君にも前に説明したように、私の注意は即座にこの通気口と、ベッドに垂れている呼び鈴の綱に向かったのだ。
10679    これが本来の役に立たない偽物と分かり、ベッドが床に固定されていると気づいたとき、私はこの呼び鈴の綱は、何かが穴を通って、ベッドに来るための橋なのではないかという疑いを抱いた。
10680    これが蛇であろうという考えはすぐに浮かび、博士はインドの動物を手に入れる手段があったということと考え合わせて、おそらくこれが正しい方向にあると感じた。
10681    科学的な検査では発見しにくい毒を使うという考えは、まさに東洋での経験を持つ、賢くて情け容赦ない男のものだよ。
10682    この種の毒の即効性も、彼にすれば有利な点だったろう。
10683    よほど目が鋭い検視官でなければ、毒牙によって穿たれた、二つの小さく黒っぽい穴を見つけることはなかっただろうしね。
10684    そして私は、口笛のことを考えた。
10685    もちろん博士は、朝日が部屋を照らす前に、蛇を呼び返さなければならない。
10686    彼はおそらく我々が見たミルクを使って、呼ばれたときに戻ってくるように蛇を訓練したのだ。
10687    適当と思われる時間に、そいつが綱を伝ってベッドに降りることを確信して、彼はこの通気口から蛇を通した。
10688    蛇は、部屋にいる人を噛むかもしれないし、噛まないかもしれないから、一週間ほどは無事でいられたかもしれない。

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