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小説 (story)

まだらの紐をめぐる冒険 (spec)

10669    こいつを住家に追い返し、ストーナー嬢を安全な場所に移して、地元の警察に何が起きたか知らせよう」
10670    彼は話しながら、すばやく犬用の鞭を死人の膝から取り上げ、輪をその爬虫類の首に投げかけ、忌まわしい止まり木——ロイロット博士の体から引き離し、腕を延ばしたまま運んで、鉄の金庫に投げ入れ、扉を閉めた。
10671    以上が、ストーク・モランのグリムズビー・ロイロット博士の、死の真相である。
10672    悲報をおびえきったヘレンに伝えて、彼女をハロウの親切なおばの元へ、朝一番の列車で送ったこと、のろのろした公式の調査が、博士が危険なペットと「不用意に戯れて」いたときに死んだ、という結論に達したことなどを説明して、この叙述をこれ以上引き伸ばすこともないだろう。
10673    次の日に、帰る道すがら、ホームズは私にこの件で、はっきりしていないところを話してくれた。
10674    「ねえ、ワトソン、私はまったく誤った結論に達していたのだ。
10675    不十分な資料から推論するのがいかに危険かということだ。
10676    不幸なジュリア・ストーナー嬢が、マッチの火でわずかに見えたものを言い表すのに使った『バンド』という言葉と、ジプシーの存在が、私をまったく誤った方向に向かわせたのだ。
10677    部屋の住人を脅かした者は、窓からも扉からも入ってこられなかったということが、明らかになった時点で、立場を考えなおしたことだけは、自分でも良かったと思っている。
10678    君にも前に説明したように、私の注意は即座にこの通気口と、ベッドに垂れている呼び鈴の綱に向かったのだ。
10679    これが本来の役に立たない偽物と分かり、ベッドが床に固定されていると気づいたとき、私はこの呼び鈴の綱は、何かが穴を通って、ベッドに来るための橋なのではないかという疑いを抱いた。
10680    これが蛇であろうという考えはすぐに浮かび、博士はインドの動物を手に入れる手段があったということと考え合わせて、おそらくこれが正しい方向にあると感じた。
10681    科学的な検査では発見しにくい毒を使うという考えは、まさに東洋での経験を持つ、賢くて情け容赦ない男のものだよ。
10682    この種の毒の即効性も、彼にすれば有利な点だったろう。
10683    よほど目が鋭い検視官でなければ、毒牙によって穿たれた、二つの小さく黒っぽい穴を見つけることはなかっただろうしね。

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