小説 (story)
10665 「沼蛇だ!」とホームズは叫んだ。
10666 「インドで最も危険な毒蛇だ。
10667 噛まれて十秒もしないうちに死んだろう。
10668 力を使うものは力によって滅び、策士は自らの掘った落とし穴に落ちるものだ。
10669 こいつを住家に追い返し、ストーナー嬢を安全な場所に移して、地元の警察に何が起きたか知らせよう」
10670 彼は話しながら、すばやく犬用の鞭を死人の膝から取り上げ、輪をその爬虫類の首に投げかけ、忌まわしい止まり木——ロイロット博士の体から引き離し、腕を延ばしたまま運んで、鉄の金庫に投げ入れ、扉を閉めた。
10671 以上が、ストーク・モランのグリムズビー・ロイロット博士の、死の真相である。
10672 悲報をおびえきったヘレンに伝えて、彼女をハロウの親切なおばの元へ、朝一番の列車で送ったこと、のろのろした公式の調査が、博士が危険なペットと「不用意に戯れて」いたときに死んだ、という結論に達したことなどを説明して、この叙述をこれ以上引き伸ばすこともないだろう。
10673 次の日に、帰る道すがら、ホームズは私にこの件で、はっきりしていないところを話してくれた。
10674 「ねえ、ワトソン、私はまったく誤った結論に達していたのだ。
10675 不十分な資料から推論するのがいかに危険かということだ。
10676 不幸なジュリア・ストーナー嬢が、マッチの火でわずかに見えたものを言い表すのに使った『バンド』という言葉と、ジプシーの存在が、私をまったく誤った方向に向かわせたのだ。
10677 部屋の住人を脅かした者は、窓からも扉からも入ってこられなかったということが、明らかになった時点で、立場を考えなおしたことだけは、自分でも良かったと思っている。
10678 君にも前に説明したように、私の注意は即座にこの通気口と、ベッドに垂れている呼び鈴の綱に向かったのだ。
10679 これが本来の役に立たない偽物と分かり、ベッドが床に固定されていると気づいたとき、私はこの呼び鈴の綱は、何かが穴を通って、ベッドに来るための橋なのではないかという疑いを抱いた。
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