小説 (story)
10595 「あれが例のヒヒだよ」
10596 私は、博士が熱愛する奇妙なペットのことを忘れていたのだ。
10597 チーターもいたはずだ。
10598 いつ肩に乗りかかってくるかしれない。
10599 ホームズを真似て靴を脱ぎ、寝室に入ったとき、私はようやく一安心をした。
10600 ホームズは音を立てないように雨戸を閉め、ランプをテーブルの上に置いて、部屋の中を見回した。
10601 昼間見たときと、すべてが同じようだった。
10602 彼は私の方にそっと歩み寄って、手をラッパのようにし、かろうじて言葉が判別できる程度にそっとささやいた。
10603 「ちょっとでも音を立てると、計画は水の泡だ」
10604 私は聞こえたというつもりで、うなずいた。
10605 「我々は、光なしで座っていなければならない。
10606 通気口から彼に見えてしまうだろうから」
10607 私はまたうなずいた。
10608 「眠り込まないでくれよ。
10609 君の命が掛かってるかもしれないんだから。
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