小説 (story)
10575 今度の相手は一枚上手だが、ワトソン、我々なら、さらにその上手をいくことができるはずさ。
10576 それはそうと、夜明け前までには、何か恐ろしいことに立ち向かわなければなるまいから、今は静かにパイプでも吹かしながら、数時間は何か、もっと元気の出るように気分を変えておこうよ」
10577 九時頃、木々の間から漏れていた光が消され、屋敷の方向は真っ暗になった。
10578 ゆっくり二時間が過ぎていき、突然、時計が十一時を打ったときに、我々のちょうどすぐ前にひとつの明るい光が差してきた。
10579 「あれが合図だ」とホームズは言って、起き上がった。
10580 「真ん中の窓から来ている」
10581 宿を出るときに、我々は主人に挨拶して、知人を尋ねるので、もしかすると向こうで泊まるかも知れないと言った。
10582 そして我々は、身の引き締まるような冷たい風が顔に吹きつける暗い道に出た。
10583 暗闇の中で黄色い明かりがひとつ、我々の前にまたたいて、陰気な仕事へと導いていた。
10584 垣に修繕されていない隙間があったので、領地に入るのは難しくはなかった。
10585 木々の間を進むうちに芝生にたどり着き、そこを横切って窓から入ろうとしたとき、月桂樹の茂みから醜く、妙に歪んだ子供のようなものが走り出てきた。
10586 そいつは草の上に身を投げ出して四肢をよじらせ、それから芝生を素早く走って横切り、闇に消えた。
10587 「なんてこったい!」
10588 私はささやいた。
10589 「見たかい?」
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