小説 (story)
10444 「ええ、針金とつながってさえいない。
10445 これは面白いな。
10446 通気口の小さな穴の上の、鉤に結び付けられているのが見えるでしょう」
10447 「何てことでしょう!
10448 全然気がつきませんでしたわ」
10449 「まったく奇妙だ!」とホームズはつぶやき、綱を引いた。
10450 「一つ二つ、この部屋についてどうも奇妙な点がありますね。
10451 たとえば、外の空気を取り込むことができるものを、通気口を別の部屋に面して取り付けるとは、設計者は大ばか者に違いないですな」
10452 「通気口も最近のものですわ」と婦人は言った。
10453 「呼び鈴の綱と同じころですか?」とホームズは訊いた。
10454 「ええ、そのころ少々工事をしたのです」
10455 「これらはまったく面白い代物です——偽の呼び鈴の綱、そして通気ができない通気口。
10456 ストーナーさん、お許しをいただければ、内側の個室についても調べたいのですが」
10457 グリムズビー・ロイロット博士の部屋は、義理の娘の部屋より大きかったが、家具は同様に質素なものだった。
10458 折り畳み式のベッド、技術的な内容の本で埋まった小さな木製の棚、ベッドのそばの肘掛け椅子、壁際の質素な木の椅子、丸いテーブル、大きな鉄の金庫などが、目に触れた主なものだった。
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