小説 (story)
10393 翼の一方では、窓は割れて木の板で塞いであり、屋根は部分的に崩れ落ち、さながら廃墟を絵に描いたようだった。
10394 中央部は少しは修理がされており、右手の部分は比較的最近のもののようで、いくつかの煙突からあがる青い煙が渦を描いているのと、窓に日除けがあるので一家が住んでいる場所であることが分かった。
10395 足場のいくつかは端の壁に作られており、石積の工事が始められているようだったが、我々が訪れたときには、石工はいなかった。
10396 ホームズは手入れの悪い芝生をゆっくり行ったり来たりして、細心の注意を払いながら、窓の外側を調査した。
10397 「察するに、これが、あなたが以前寝室として使われていた部屋の窓ですね。
10398 この中央のがあなたのお姉さま、母屋の次の窓がロイロット博士のものですか?」
10399 「その通りです。
10400 でも、私は、今は真中の部屋で寝起きしています」
10401 「改装が終わるまでね、なるほど。
10402 ところで、あの端の壁は、特に直す必要もなさそうじゃありませんか」
10403 「そうなのです。
10404 私を元の部屋から移すための言い訳なのではと思っています」
10405 「ああ!
10406 それはごもっともです。
10407 さて、この狭い翼の反対側に、三つの部屋と通じる廊下があるのですな。
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