小説 (story)
10347 とくにあの老人は、我々が関わっていることに気が付いているからな。
10348 君の準備ができれば、カブを呼んで、ウォータルーまで行こう。
10349 君のリヴォルヴァを、ポケットに突っ込んでおいてくれると助かる。
10350 イリー二号拳銃は、鉄の火かき棒を捻ってしまうような紳士方には、実に役立つものだよ。
10351 それと歯ブラシと、うん、これで準備よし」
10352 ウォータルーでレザーヘッドへの列車を運よくつかまえて、レザーヘッドからは軽二輪馬車を駅宿で借り、サリー州の美しい小道を四、五マイル走った。
10353 その日は見事な天気で、太陽は輝き、空には羊毛のような雲が、いくつか浮かんでいるだけだった。
10354 木々と道端の生垣は、新芽を出し始めていて、空気は気持ちのいい、湿った土の匂いに満ちていた。
10355 この春の甘い予感と、我々が関わっているこの不吉な冒険の間に、私は妙な対比を感じていた。
10356 我が友は、軽二輪馬車の前に座って腕組みをし、帽子を目深にかぶり、顎を胸にうずめて考え込んでいた。
10357 突然、彼は急に私の肩を叩いて、農場の向こうを指差した。
10358 「あれだ!」
10359 木が深く生い茂った庭園が緩やかな坂になって、その一番高いところで木立へとつながっている。
10360 枝の間から非常に古めかしい邸宅の高い棟木と、灰色の破風が突き出していた。
10361 「こちらがストーク・モランかい?」とホームズが尋ねた。
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