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小説 (story)

まだらの紐をめぐる冒険 (spec)

10343    それぞれの娘は結婚すれば、二百五十ポンドずつ得ることになる。
10344    だから、たとえ娘が一人結婚しても大損だが、両方とも結婚すれば、ロイロットにはそれこそほんのわずかしか残らない。
10345    彼が結婚をはばむ強い動機を持っていたことがこれで証明されたのだから、朝の仕事は無駄ではなかったわけだ。
10346    さてワトソン、事態はもはや一刻の猶予もゆるされないほど深刻だ。
10347    とくにあの老人は、我々が関わっていることに気が付いているからな。
10348    君の準備ができれば、カブを呼んで、ウォータルーまで行こう。
10349    君のリヴォルヴァを、ポケットに突っ込んでおいてくれると助かる。
10350    イリー二号拳銃は、鉄の火かき棒を捻ってしまうような紳士方には、実に役立つものだよ。
10351    それと歯ブラシと、うん、これで準備よし」
10352    ウォータルーでレザーヘッドへの列車を運よくつかまえて、レザーヘッドからは軽二輪馬車を駅宿で借り、サリー州の美しい小道を四、五マイル走った。
10353    その日は見事な天気で、太陽は輝き、空には羊毛のような雲が、いくつか浮かんでいるだけだった。
10354    木々と道端の生垣は、新芽を出し始めていて、空気は気持ちのいい、湿った土の匂いに満ちていた。
10355    この春の甘い予感と、我々が関わっているこの不吉な冒険の間に、私は妙な対比を感じていた。
10356    我が友は、軽二輪馬車の前に座って腕組みをし、帽子を目深にかぶり、顎を胸にうずめて考え込んでいた。
10357    突然、彼は急に私の肩を叩いて、農場の向こうを指差した。

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