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小説 (story)

まだらの紐をめぐる冒険 (spec)

10339    彼は、字や数字を書きなぐった青い紙を一枚、手に持っていた。
10340    「ロイロットの、亡くなった妻の遺言を見てきたよ」と彼は言った。
10341    「遺言の持つ正確な意味を知るために、現在の投資物の価格を調べてみる必要があったのさ。
10342    ロイロット夫人が亡くなった時点での収入は、年千百ポンド弱だったが、農作物の価格の下落を計算に入れても、七百五十ポンドほどになる。
10343    それぞれの娘は結婚すれば、二百五十ポンドずつ得ることになる。
10344    だから、たとえ娘が一人結婚しても大損だが、両方とも結婚すれば、ロイロットにはそれこそほんのわずかしか残らない。
10345    彼が結婚をはばむ強い動機を持っていたことがこれで証明されたのだから、朝の仕事は無駄ではなかったわけだ。
10346    さてワトソン、事態はもはや一刻の猶予もゆるされないほど深刻だ。
10347    とくにあの老人は、我々が関わっていることに気が付いているからな。
10348    君の準備ができれば、カブを呼んで、ウォータルーまで行こう。
10349    君のリヴォルヴァを、ポケットに突っ込んでおいてくれると助かる。
10350    イリー二号拳銃は、鉄の火かき棒を捻ってしまうような紳士方には、実に役立つものだよ。
10351    それと歯ブラシと、うん、これで準備よし」
10352    ウォータルーでレザーヘッドへの列車を運よくつかまえて、レザーヘッドからは軽二輪馬車を駅宿で借り、サリー州の美しい小道を四、五マイル走った。
10353    その日は見事な天気で、太陽は輝き、空には羊毛のような雲が、いくつか浮かんでいるだけだった。

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