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小説 (story)

まだらの紐をめぐる冒険 (spec)

10332    「私はあんなに図体はでかくはないが、もしまだ今部屋に残っていてくれれば、私もそれほどひ弱ではないことを、お見せできたのだが」
10333    彼は、話しながら鉄の火かき棒を取り上げると、一息のもとに、ぐいっと真っ直ぐに戻してしまった。
10334    「失礼にも、この私と警察を一緒にしてくれるとはね!
10335    今のことは我々の調査にとっては一興だったが、我らが友人ストーナー嬢が、この乱暴者に後をつけられた軽率さを責められなければいいのだが。
10336    さて、ワトソン、我々は朝食を食べよう。
10337    その後でたぶんこの件について資料を少々得られるだろうから、民法博士会館まで歩いていくよ」
10338    ホームズが外出から帰ってきたのは、もう一時に近かった。
10339    彼は、字や数字を書きなぐった青い紙を一枚、手に持っていた。
10340    「ロイロットの、亡くなった妻の遺言を見てきたよ」と彼は言った。
10341    「遺言の持つ正確な意味を知るために、現在の投資物の価格を調べてみる必要があったのさ。
10342    ロイロット夫人が亡くなった時点での収入は、年千百ポンド弱だったが、農作物の価格の下落を計算に入れても、七百五十ポンドほどになる。
10343    それぞれの娘は結婚すれば、二百五十ポンドずつ得ることになる。
10344    だから、たとえ娘が一人結婚しても大損だが、両方とも結婚すれば、ロイロットにはそれこそほんのわずかしか残らない。
10345    彼が結婚をはばむ強い動機を持っていたことがこれで証明されたのだから、朝の仕事は無駄ではなかったわけだ。
10346    さてワトソン、事態はもはや一刻の猶予もゆるされないほど深刻だ。

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