10293    あまりにも背が高いので、シルク・ハットは扉の上枠をこすらんばかり、体の横幅は扉のほとんど左端から右端までありそうだった。

10294    極めて邪悪な衝動を感じさせる大きな顔は、無数の皺に刻まれて黄色に日焼けし、深く窪んだ不機嫌そうな目は、我々をじろじろと見回し、薄くて骨ばった高い鼻は、獰猛で年を経た猛禽にも似ていた。

10295    「お前たちのどっちがホームズだ？」と、この化け物は訊いた。

10296    「私ですが、どちら様でいらっしゃいますかな？」と、相棒は静かに答えた。

10297    「わしはストーク・モランのグリムズビー・ロイロットだ」

10298    「なるほど、博士」

10299    ホームズはなだめるように言った。

10300    「どうぞお掛けください」

10301    「そんなことはせんぞ。

10302    わしの義理の娘がここに来たな。

10303    娘を追ってきたのだ。

10304    あいつはお前たちに何を言ったのだ？」

10305    「……今の時期にしてはちょっと寒いですな……」とホームズは言った。

10306    「あいつは何を言ったのだ？」と老人は怒り狂って叫んだ。

10307    「……でも今年のクロッカスは、いい出来になりそうだと聞いています」