10287    だからこそ今日ストーク・モランに行くのだよ。

10288    私はその穴が決定的なものか、説明がつくのか確かめたい。

10289    おや、どうしたというんだ！」

10290    我が相棒は、叫び声をあげた。

10291    扉が突然開かれ、そこに扉につっかえんばかりに巨大な男が突っ立っていたのだ。

10292    彼の服装は仕事着と農夫の格好がまじった奇妙なもので、黒のシルク・ハットに長いフロック・コート、そして長いゲートルをはき、狩猟用の鞭を手に持っていた。

10293    あまりにも背が高いので、シルク・ハットは扉の上枠をこすらんばかり、体の横幅は扉のほとんど左端から右端までありそうだった。

10294    極めて邪悪な衝動を感じさせる大きな顔は、無数の皺に刻まれて黄色に日焼けし、深く窪んだ不機嫌そうな目は、我々をじろじろと見回し、薄くて骨ばった高い鼻は、獰猛で年を経た猛禽にも似ていた。

10295    「お前たちのどっちがホームズだ？」と、この化け物は訊いた。

10296    「私ですが、どちら様でいらっしゃいますかな？」と、相棒は静かに答えた。

10297    「わしはストーク・モランのグリムズビー・ロイロットだ」

10298    「なるほど、博士」

10299    ホームズはなだめるように言った。

10300    「どうぞお掛けください」

10301    「そんなことはせんぞ。