小説 (story)
10196 「ちょっと待ってください」とホームズは言った。
10197 「あなたはこの口笛と金属音を確かに聞いたのですね?
10198 誓って?」
10199 「州の検視官様も、同じ事を質問されました。
10200 確かに聞いたという強い印象があるのですが、あの風と古い家のきしみのせいで、もしかすると聞き違えたのかもしれません」
10201 「お姉さまは、服をきちんと着ておられましたか」
10202 「いえ、姉は夜着でした。
10203 右手に焦げたマッチの燃えさしと、左手にマッチ箱を持っていました」
10204 「つまりお姉さまは何か危険を感じ、マッチを点けて、辺りを見回したわけだ。
10205 それは重要ですね。
10206 それで検視官はなんと?」
10207 「義父の品行は州でつとに悪名高いものでしたから、検視の方は、細心の注意をもって調査されたようです。
10208 でも、検視の方は納得のいく死因を見つけることはできませんでした。
10209 私の部屋と同じで、姉の扉は内側から鍵がかけられ、窓は古風な鎧戸と太い鉄棒で、毎夜しっかり閉められていました。
10210 壁も叩いて、徹底的に調べられましたが、どこもしっかりしていました。
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