小説 (story)
10162 「夜は、いつもご自分の部屋の鍵をお掛けになるのですか?」
10163 「ええ、いつもです」
10164 「どうして、また?」
10165 「博士がチーターとヒヒを飼っていることは、お話ししたと思います。
10166 私たちは、扉の鍵を掛けないと安心できないのです」
10167 「ああ、なるほど、ごもっとも。
10168 どうぞお続けください」
10169 「その夜は眠れませんでした。
10170 何とはなしに、迫り来る不幸の予感があったのです。
10171 姉と私は、お話したように双子です。
10172 二つのこれほど似通った魂を結び付ける絆が、どれほど神秘的で敏感なものかはお分かりでしょう。
10173 あの夜は、ひどい天気でした。
10174 風が外で吠え立て、叩きつけるような雨が、窓に跳ね返っていました。
10175 突然、うなる大風の中で、おののいた女性の激しい叫び声が響きました。
10176 それは姉の声でした。
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