小説 (story)
10146 『いいえ、ぜんぜん』
10147 『眠っている間に、口笛を吹くことなんてしないわよね』
10148 『もちろんよ。
10149 でも、なぜ?』
10150 『ここ何日かずっと、午前三時ごろに、低くはっきりとした口笛を聞いたの。
10151 私はすぐ目が覚めるたちだから、その音でいつも目が覚めたのよ。
10152 隣の部屋と芝生の、どちらから聞こえてきたかは、はっきりしないわ。
10153 ただ、あなたも聞いたかどうか、ちょっと確かめてみようと思ったの』
10154 『いえ、聞かなかったわ。
10155 きっと、あの農園の惨めなジプシーたちに違いないわ』
10156 『そうでしょうね。
10157 でも、もしあれが芝生から聞こえてきたとしたら、あなたが聞かなかったというのは変ね』
10158 『ええ、でも私は、あなたよりぐっすり眠るから』
10159 『まあ、大したことじゃないわね、どっちにしても』
10160 姉は私に微笑み返して扉を閉め、何秒か後に、部屋の鍵の音がしたのが聞こえました」
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