小説 (story)
10123 「とすると、お姉さまはお亡くなりになったのですね?」
10124 「姉はちょうど二年前に亡くなり、そのことがまさに、お話したいことなのです。
10125 お分かりいただけるでしょうが、いま申し上げたような生活の中で、私たちは、同じ年や同じ立場にある人と会うことは、ほとんどありませんでした。
10126 しかしハロウの近くに、私の母方のおばにあたるミス・オノリア・ウェストヘイルが住んでおり、私たちは時折短いながらも、この未婚のおばの家を訪問することを許されておりました。
10127 ジュリアは、二年前のクリスマスの時分にそこへ行ったときに、休職中の海兵少佐と出会い、婚約したのです。
10128 義父は、姉が帰宅して、その婚約のことを聞いたとき、反対はしませんでした。
10129 しかし、結婚まで二週間という日に、恐ろしい出来事が、私のたった一人の姉を奪ってしまったのです」
10130 ホームズは、椅子に身を預け、クッションに頭を埋めて目を閉じていた。
10131 が、彼は今やまぶたを半分開いて、依頼人の方に目をやった。
10132 「どうぞ、詳細に至るまで正確にお話ください」
10133 「正確にお話するのも、難しくはありませんわ、あの恐ろしい時間に起きた、すべての事は記憶に焼きついていますもの。
10134 私どもの邸宅は、お話したとおり、とても古くて、一翼だけが住居として使われております。
10135 この翼にある寝室はどれも一階にあり、居間は建物の中央部にあります。
10136 これらの寝室のうち、最初がロイロット博士、二番目が姉の、三番目が私の部屋です。
10137 これらの部屋の間には扉などはありませんが、すべて同じ廊下から出入りできます。
Go to Dashboard (guest)