小説 (story)
10118 義父は、ある駐在員から送られてくる、インドの動物にも情熱を傾けております。
10119 今も、チーターとヒヒを飼っており、義父の土地を自由に歩き回っては、村人たちから飼い主同様に、恐れられております。
10120 お分かりでしょうが、哀れな姉、ジュリアと私は、人生に楽しみなどを見出すことは、とてもできません。
10121 どんな召使もいつかず、ずいぶん長いこと、私たちは家事をすべて自分たちだけでしております。
10122 姉は亡くなった時、まだ三十でしたが、私同様、髪には白髪が混じり始めていました」
10123 「とすると、お姉さまはお亡くなりになったのですね?」
10124 「姉はちょうど二年前に亡くなり、そのことがまさに、お話したいことなのです。
10125 お分かりいただけるでしょうが、いま申し上げたような生活の中で、私たちは、同じ年や同じ立場にある人と会うことは、ほとんどありませんでした。
10126 しかしハロウの近くに、私の母方のおばにあたるミス・オノリア・ウェストヘイルが住んでおり、私たちは時折短いながらも、この未婚のおばの家を訪問することを許されておりました。
10127 ジュリアは、二年前のクリスマスの時分にそこへ行ったときに、休職中の海兵少佐と出会い、婚約したのです。
10128 義父は、姉が帰宅して、その婚約のことを聞いたとき、反対はしませんでした。
10129 しかし、結婚まで二週間という日に、恐ろしい出来事が、私のたった一人の姉を奪ってしまったのです」
10130 ホームズは、椅子に身を預け、クッションに頭を埋めて目を閉じていた。
10131 が、彼は今やまぶたを半分開いて、依頼人の方に目をやった。
10132 「どうぞ、詳細に至るまで正確にお話ください」
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