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小説 (story)

まだらの紐をめぐる冒険 (spec)

10113    義父は大変力持ちで、怒るとまったく手がつけられなかったのです。
10114    先週、義父は、村の鍛冶を、橋の手すり越しに川に投げ込みました。
10115    私が集められる限りのお金を払って、ことが公になるのをようやく、まぬがれたのです。
10116    義父は、放浪のジプシー以外は友達を持たず、彼らに一家の地所である、茨で覆われた数エーカーの土地で、キャンプする許可を与えていました。
10117    その代わりに、義父は彼らのテントで過ごし、時には数週間にも渡って、連中とさすらうこともありました。
10118    義父は、ある駐在員から送られてくる、インドの動物にも情熱を傾けております。
10119    今も、チーターとヒヒを飼っており、義父の土地を自由に歩き回っては、村人たちから飼い主同様に、恐れられております。
10120    お分かりでしょうが、哀れな姉、ジュリアと私は、人生に楽しみなどを見出すことは、とてもできません。
10121    どんな召使もいつかず、ずいぶん長いこと、私たちは家事をすべて自分たちだけでしております。
10122    姉は亡くなった時、まだ三十でしたが、私同様、髪には白髪が混じり始めていました」
10123    「とすると、お姉さまはお亡くなりになったのですね?」
10124    「姉はちょうど二年前に亡くなり、そのことがまさに、お話したいことなのです。
10125    お分かりいただけるでしょうが、いま申し上げたような生活の中で、私たちは、同じ年や同じ立場にある人と会うことは、ほとんどありませんでした。
10126    しかしハロウの近くに、私の母方のおばにあたるミス・オノリア・ウェストヘイルが住んでおり、私たちは時折短いながらも、この未婚のおばの家を訪問することを許されておりました。
10127    ジュリアは、二年前のクリスマスの時分にそこへ行ったときに、休職中の海兵少佐と出会い、婚約したのです。

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