From to: sid: window:

小説 (story)

まだらの紐をめぐる冒険 (spec)

10000    まだらの紐をめぐる冒険
10001    我が友シャーロック・ホームズの手法をここ八年記録している手帳に記された、七十件あまりの事件のノートをざっと眺めてみると、多くは悲劇的であり、いくつかは喜劇的であり、大多数は単に奇妙なだけだが、どれも尋常ではない事件である。
10002    というのも、ホームズが活動するのは、富を得るためではなく、自らの技能を愛するがゆえであり、彼は異常な、さらには奇想天外な調査でなければ、関わるのを拒んだからである。
10003    しかしながら、これらの様々な事件のうちで、私はサリー州に住む有名なストーク・モランのロイロット一家に関わる一件ほど、奇妙な様相を呈した事件は思い出せない。
10004    問題の事件は、私がホームズと関わりあいをもつようになって間もないころもので、独身者同士、ベイカー街に同居していたときのことである。
10005    問題の出来事は、もっと以前に公表することもできたのだが、私は秘密の宣誓をしていた。
10006    だが、その秘密を守ることを約束した婦人が、先月不幸にも若くして亡くなったため、私は秘密を守る義務から解放された。
10007    グリムズビー・ロイロット博士の死に関しては、すでにいくつもの噂が流布しているが、そのような噂は真実よりむごく出来事を誇張しがちであるから、事実を今明らかにするべきだろう。
10008    一八八三年の四月初めのある朝、私が目覚めると、ホームズがすっかり服を着て、ベッドのそばに立っていた。

Go to Dashboard (guest)